スカイライン ターボ C

先日Gr.Cの話題振りに反応したのをきっかけに、以前から気になっている車両のことを思い出しましたので、忘れないうちに書いておきます。

スカイライン・ターボCです。

Gr.5車両として1982年のキャラミ9時間に出場後、改造されてGr.C車両になったとはよく聞くのですが、ケメ子的には謎だらけです。

そんな中、キャラミ9時間の写真つきサイトがありましたので、まじまじと閲覧。

・最初の謎は、エントリー名。
キャラミ9時間にエントリーした際の車両がすでに「スカイライン・ターボC」のようなのです。そして、(写真では分かりにくいですが)両サイドポッドの前端部に、"C"という黒文字が書かれています。スポンサー企業のロゴなどではなさそうです。
Gr.5でエントリーするのに、わざわざGr.Cを思わせる名称を使ったり、車体への文字表示をしてエントリーするものなんですかねぇ。

・二つ目の謎は、レギュレーションとの整合性。
ありがたいことに、FIAのサイトには当時の車両レギュレーションがPDF資料で公開されていますので、ちょっと抜粋。


Art 269 b1) The outside shape of the original coachwork must be retained, except as concerns the wings and the aerodynamic devices allowed.

Art 269 b3) In all circumstances, the bonnets and bootlids must be interchangeable with the original homologated ones.

Art 269 b1では、追加の空力部品以外はオリジナルの形状を保つこととなっています。
各社のGr.5車両が、バンパーなどの形状を残したボディスタイルなのはこの辺りの影響なのでしょうけれど、写真のスカイライン・ターボCの場合は、「バンパーもすべて覆い尽くしたエアロだ(笑)」と言い張るにしても、かなり黒に近いグレーに思えます...。

Art 269 b3では、ボンネットとトランクリッドが純正部品(公認部品)と互いに交換できることと記載がありますが、スカイラインの場合は、特にフロント周りに問題がありそうです。パーティションラインを見るに、たぶん純正ボンネットとは付け替え効かないんじゃないかなあと思います。

(「バンパーを覆い尽くしたエアロ」と書きながらセリカLBのGr.5車両を思い出しましたが、セリカはボンネットの交換がOKそうに見えます。)


Art 269 b2) No modification may be made in the series-production body shell and/or chassis, except as concerns lighting the original basic structure by removing material and/or adding reinforcements.

シャシーは純正のままとありますが「軽量化」と「補強」が許可されているので、割と何でもアリのような気はします。車室の辺りに純正の残り香のようなもの(笑)さえあれば良さそうです。
が、「パイプフレームで完全に作り直す」はアウトですね。

ところが、スカイライン・ターボCについて書かれた記事を見ると「シャシーはすべてパイプフレームで組まれた純レーシングカー」(岡崎宏司「スカイライン」)、「外観的にはシルエットフォーミュラ(グループ5)スカイラインに似ているがまったく異なる」(大串信「レーシングオン Cカーの時代」)ということなので、普通に考えると、スカイライン・ターボCは、Gr.5レギュレーションにはおそらく合致しないだろうと思えます。

でも、「キャラミ9時間で使用した車両を改造してGr.Cにエントリーした」という記事は散見されるので、確かにキャラミの車両はその後のCカーなのでしょう。

......謎。


・おまけの謎。
http://www.racing-database.com/Race.asp?GP=II Kyalami 1000 kms
スカイライン・ターボC、 なんと1984年には再びキャラミで耐久レースに出場しているようです。これどういうこと?

http://blog.retro-classics.co.nz/?p=1636
外人情報では、南アフリカの日産ディーラーの要望で作られた車両だということになっていますが、そうするとこの車両って2台作ったってことでしょうかね?それとも、キャラミ9時間の後日本に持ち帰ってしまって、それを使い終わったところで再度南アフリカに送られたのですかね?
軽くのつもりでWEBで検索したら、謎が更に増えてしまった...(笑)。

 

・仕方ないので、仮説。
面倒くさくなったので、この車、本来はGr.C車両として作成されていたのではないか、と与太話レベルの仮説を立ててみます。
このキャラミ9時間、非選手権レースだったのをいいことに、主催者とエントラント(日産)の阿吽の呼吸で、細かいところに目をつぶってGr.5としてエントリーさせてしまったのではないかな、と...。
主催者だって、金を出して目玉になるチームを呼ぶんでしょうから、その一環で取引した、みたいな。普通に考えて、スターティングマネーのような取引が無ければ、ポルシェワークスが南アフリカの非選手権戦には参戦しないでしょう。そして日産との取引は参戦クラスの調整だった、という感じで...。
スカイラインでは、どうせポルシェ956などの純粋なGr.Cには勝てないんだし、まあいいんじゃね?みたいな与太話でどうでしょう(笑)。


つーか、この辺り誰かちゃんと調べてくれないかなぁ(他人任せモード突入)。

20140818追記
最近はこの車両のミニカーなんかが数多くリリースされているので、ボディ全体の造形を見ることができます。それらを見ると、キャラミ仕様はトランクリッドがボディサイドまで回りこんでますね...。これ、上のほうで触れたグループ5の規定 (Art 269 b3) には違反しているように思えるのですが...(汗。
それでも予選決勝を通じて失格になっていないのは、やはり特例だったりしたのでしょうか...(大汗。
それとも、"interchangeable" を、レース車両ベース車両で互いの部品を「単に取り付けることができる」と解釈しているのでしょうかね?ヒンジ部分を取り付けることはできるけども閉めることはできないという状態でもOKなのであれば"In all circumstances" とあっても問題ないのかしら...w。