昔むかし、ミナルディというレーシングチームがありました。
めでたし、めでたし。
なんてことはいいとして、このチーム、割と微妙なネタの宝庫だったりします(立場も割と微妙ではありましたが...w)。色々と頭に浮かんだので、簡単に書いておくことにします。
- フェラーリとの関係 このチーム、1990年代にはF1でフェラーリのエンジンを手に入れたことが大きく騒がれましたが、実は結構フェラーリとは長い付き合いだったりします。
- 1970年代、まだミナルディが前身チームの頃のことですが(スクーデリア・エベレストと名乗っていました)、F1マシンのフェラーリ312Tそのものを貸与され、2度の非選手権レースにエントリーしています。このときのカラーリングはフェラーリ本体チームと基本的に同じ塗装で、エアボックス部分を白から黒に塗り替えていました。また、チームのF2シリーズへの参戦に際しては、フェラーリエンジンを供給されていました。
- 1985年にミナルディがモトリモデルニ製ターボエンジンを使ってF1に参戦を開始すると、翌年にはエンジンマネジメントシステムをフェラーリが供給/メンテナンスをするようになりました。
- そして1991年のエンジン供給に至る訳で、フェラーリとミナルディは、それなりに脈々と続く関係があったりするのでした...。
- なお、モトリモデルニエンジンですが、ミナルディ側のオーダーによって、エンジンマウントがDFVと同じ寸法で設計されているそうです。1985年車両がシーズン中にDFVからモトリモデルニにエンジンを換装しているのは、大改造といった種類の作業では無かったようです。
- また、このモトリモデルニがのちに排気量が拡大されてアルゴのC2カーに搭載されていますが、こちらもDFVやDFLからの換装だったと考えると、やっぱりこれも無理のない乗せ換えだったのでしょう...(笑)。
なお、これらの話は基本的に洋書(翻訳本も含む)で知ったものです。日本の報道や出版ではまず出てこない(出てこなかった)辺りが残念ですねぇ...。
- 1987年の車名
1987年の使用マシンの名称が、世間では結構おかしなことになっています。
WEBなどを見る限りでは、1987年には「M187」という車両を使っていることになっている記事が多いのですけれど、1987年日本GPのオフィシャルプログラム、日本やオーストラリアの出版社によるイヤーブックなどに記載されたエントリーリストには、「M186」と記載されています。ミナルディ自身のWEBサイトにも「M187」は存在せず、1987年は「M186」だとの表記があったりしました(最近はそのページが見えなくなってしまいましたが)。
この辺りに詳しい資料を当たると、1987年に使われた車両は、1986年のシーズン終了後、1987年の開幕までに追加製造されたM186とのことです...。
ここで、1987年に使われた車両がなんで「M187」になっちゃったんだ?と考えていると、2つほどの要因とおぼしきものに気が付きました。
- 1.英語圏でたぶん最も権威のある年鑑である、Autocourseの1987年版に「M187」との記載があり、これが情報源になっているのかも知れません。ただしこの本を精査すると、M187の説明として「前年のシャシーに改良サスペンションを装備」などという微妙な記載があったりします。←なんだよ前年型(=M186)って言ってるじゃんw。
- 2.M186は1986年には1台しか製造されず、2台目の車両とスペアカーは「M185B」でした。「1987年は前年とは変わって、同じ車両が2台揃った」ことから、ジャーナリスト側が前年モデルを追生産したとは考えず、新モデルであると取り違えが発生したのではないかと...。
- トップチームであれば、その辺りの正確な情報が追われるのでしょうけれど、ミナルディは絶妙にマイナーチームでしたからね...(汗)
参考までに、この内容が書かれた手持ちの文献は以下のものです。
フェラーリとミナルディの関係:
・世界のレーシングエンジン, イアン・バムゼイ(著) 三重宗久(訳), グランプリ出版 (原題:International Race Engine Directory, Ian Bamsey)
・Ferrari Formula 1 Cars 1948-1976, Jonathan Thompson, Aztex Corporation
ミナルディ M186 or M187:
・Autocourse 1987-88, Hazleton Publishing
・The 1000BHP Grand Prix Cars, Ian Bamsey, Haynes Publishing Group
・Grand Prix 1987, Garry Sparke & Associates
・フジテレビ オフィシャル F1 YEAR BOOK 87-88, フジテレビ出版
・1987 F1 日本GP 公式プログラム
追伸(2013-02-18):
ミナルディの各年度モデルのページが復活したようです。
http://www.minardi.it/international/history/cars-and-drivers-of-minardi-history/
ミナルディのトップページはこちら
http://www.minardi.it/international/
matt
ミナルディの186/187問題は前にも聞いたことがあって、ケメ子のこのエントリーを読むまで完全に忘却の彼方でした。
確かOZで読んだ雑誌(なのでたぶん英国ASと思われ)のコンストラクター訪問的な記事で、軽くそのへんに触れていたものがあったんだ。
で、ジャンカルロのお答えは簡単。
有るもので走るしかないんだから、それがどのモデルかなんて気にしない。
というわけで、ミナルディ自身もシャシのモデルやナンバーについてはあまり重要視しておらず、目前のモノコックがどの個体かを識別できていればそれで良かったのではないかと。
佐々木氏は今どこで何をされているのだろうか。彼のインタビューを取れれば真相が多少はわかるだろうけれど、真相そのものが「まあ適当」な可能性は極めて高いわけで。
kemeko
まあ、公式エントリーにわざわざ古いこと書いてるあたり、M186でエントリーしていたのが正解なのかなあと推測しています。
また、「新型(=M187)」として扱うなら、新たにクラッシュテスト受けなきゃいけないのだろうし、同じ設計のものだったら、わざわざ名前だけを変えて再試験なんてしないんじゃね?と…。
まあ、新造シャシーの車体番号を、大破→廃棄の車体と入れ替えてしまったりすることも頻繁にある時代だったわけで、「そのときにある個体それぞれ判別できればOK」というのは実感なのでしょうな。